Letras

貴方は言った 暗い映画は嫌いだと
そんなこと思い出していたんだ
空にかかる飛行機雲のように儚いその言葉を
手放したくないものも向こう岸まで連れていけないと
それならば笑っていられるだけでいいんだ
でも一人で笑うより二人で泣いていたい
咲き誇れ世界の不条理 路地裏吹き溜まる亡霊
一昨日も昨日も今日もまた 貴方を知らないまま泣いた
窓の外 虹がかかっても
心に降る雨はずっと止まないよ
瞳の奥には手は届かないからさ
貴方は言った「傷つかずに生きるのは本当に難しい」と
でもきっと天国だって苦しくて 昔を懐かしんでしまうんだ
明け方に貴方はいない 長い夢を見ていたようだった
割れた窓 踏みつぶされた紫の花
記憶は降り積もるばかり そこで笑っている
その顔はまだ鮮明で 今でも腑に落ちないんだ
病室のドアを開いたら 貴方がいる気がするんだ
事も無げに廻る地球にしがみつくだけの私は
「それでも」とあの時言ったこと何もわかってないね
或る朝目が覚めて 少し冷たい部屋で
この胸に注がれた雨水を飲み干していかなきゃ
名も知れぬ遺体の頭上に桜の花は咲いている
貴方にも世界中までも一つの花束なんだろう
この涙さえも種子で 貴方と共に芽吹いて
その日までありもしない声が耳を離れないように
最期まで一人笑っていた 路地裏の隅で
Written by: 蟲の知らせ
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