Crédits
AUSFÜHRENDE KÜNSTLER:INNEN
天河美月
Künstler:in
KOMPOSITION UND LIEDTEXT
天河美月
Komponist:in
Paroles
チューリップでも バラでもなく
図鑑にも載らない名前のない花
誰かの目に留まることもなく
屋上の隙間に 咲いていた
季節外れの風が吹くたびに
何度も ちぎれそうになりながら
それでも空を見上げた
誰に教わったわけでもなく
踏まれても、枯れても
それでも笑うことを やめなかった
誰かのためじゃない
ただ、ここに生まれたから
名前をもらえなかった花の話
知られなくても 色づいていた
だれの拍手もなかったけれど
世界にたしかに、ひとつだけ咲いてた
だれかに見つけられなくても
存在が消えるわけじゃない
この小さな願いが
風に運ばれていく
遠くできらめく花火みたいに
誰かの大きな夢はまぶしかった
だけどこの場所を離れずに
根を張ることも 強さだと知った
「もっと高く」「もっと早く」
そんな声に届かなくていい
ただここで、静かに生きる
それもひとつの誇りだった
誰にも気づかれない
そんな奇跡が ここにあった
誰にも奪えない
この命が ここにあった
名前をもらえなかった花の話
たとえ記憶に残らなくても
そっと土に触れた朝が
永遠に この胸に根を張る
光を浴びなくたって
雨に打たれても揺らがない
誰かのためじゃない
自分にだけ 咲いていた
「なにになりたかった?」なんて
訊かないでほしい
なにかになるためじゃなく
ただ、ここにいたかっただけ
名前をもらえなかった花の話
知られなくても、咲ききった
誰の目にも映らない場所で
静かに奇跡を繰り返していた
君がもしも迷ったら
この花を思い出して
名前なんてなくたって
生きているだけで、価値があるって
図鑑にない花も、
ちゃんと、春を知っていた
Written by: 天河美月