祈りの鐘が響く

祈りの鐘が響く

 月の影より深く 吹き荒ぶつむじ風に告げる

 揺れる黒い髪から 涙の香りが満ちた白夜

 彼女に未だ住み着く 睡蓮の花は胸に根づき

 帰らない人を待つ いつかカモメが運んだ手紙

 誰も知らず何者でもないと

 ただここに或る時を飛行する

 旅人は羅針盤を捨てて

 どこへと行くのだろう

 それは祈りの鐘に似ている

 声の先を何処までも探しては

 その身を焦がす 蒼き炎は

 旅路を行く 少年の姿が

 祈りの鐘が響く

 迎えた静かな朝 摘み取った花を眠らせては

 ガラスケースに飾り 永遠の美と引き換えにした

 彼女は涙の理由を最後に

 伝えぬまま少年に託した

 鳥のように 飛び立てと

 荒野には解放と希望

 あれは願いの星に似ている

 行く先を 誇らしく照らしては

 もしも力が尽きたその時

 きっと会える本当の姿が

 旅人は羅針盤を捨てて

 どこへと行くのだろう

 それは祈りの鐘に似ている

 声の先を 何処までも探しては

 その身を焦がす 蒼き炎は

 旅路を行く少年の姿が

 祈りの鐘が響く