Letras

ささくれに小さく喰い込んだ胸奥の棘が痛む夜に、
振り返ると、なぜだろう、すべてが悲しいことばかりに見えただけ。
ーー伝え方ひとつで互いに傷ができるのなら、
美しい言葉にならない気持ちはどうしよう。
気付く前に去るような短い季節みたいに、
終わったことにして、隙間風のつめたい愛を余白のなかみに仕舞い込んだ。
心の穴まで映りそうな月だけが覗き込んでいた、ただ潸潸と泣いた日を、
特別な頁に差し込んだ栞の背を撫でるように、わたしだけが読み返そうとする。
綻びや解れは遣る瀬無いほど散らばって、結わい直すにはもう離れすぎていたみたいだ。
気圧の落ちていくような静寂の重さに傾いだ横顔は、目配せも難しいほど瞳孔を濁していた。
嗚呼!
(余白のなかみに仕舞い込んだ。)
心の穴まで映りそうな月だけが覗き込んでいた、ただ潸潸と泣いた日を、
特別な頁に差し込んだ栞の背を撫でるように、
わたしだけが――褪せた言葉を――読み返そうとする。
Written by: 2gouki welec
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